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「Monochrome: Painting in Black and White」展
2018/01/17 13:59 |
このブログではしつこく「古典絵画はグリザイユ/カマイユ(単色画)で描いた下層描きに薄い絵具を何層も重ねて描かれている」という都市伝説について繰り返し批判してきましたが、批判している責任上、グリザイユ技法で描かれた19世紀以前の絵のサンプルも常に探していますので、ロンドン・ナショナルギャラリーで開催中?)の「Monochrome: Painting in Black and White」展のカタログを買ってみましたが、グリザイユ画は載っていても、いわゆる「グリザイユ技法」で描かれた彩色画は見当たりませんでした。


展覧会HP⬇
https://www.nationalgallery.org.uk/whats-on/exhibitions/monochrome-painting-in-black-and-white

私が探しているのは、グレーズ(透明色による彩色)をして仕上げるために用意された、未完成画としてのグリザイユです。

グリザイユで下層描きしていない(つまりプリマによる)未完成画は、これまでブログで沢山提示してきた以外に無数に存在しますが、グリザイユ画そのものは存在しても、グリザイユに彩色をしかけて途中でやめている未完成画は、皆無ではないものの、私が探した限りでは数点しか知りません。
私の検索能力を差し引くとしても、このような圧倒的な作例数の差があるのに「グリザイユにグレーズが古典絵画の主流技法」などと主張するのは明らかに間違っています。

例えばこれはよくグリザイユの未完成画として誤解されるヴァン・ダイクの絵ですが、
rtdlorwaq.png

まずヴァン・ダイクはこの様な主題の絵は通常大きなキャンバスに描く人で、本画として小さなサイズではほとんど描かない人ですが、この絵は32×38センチしかありません。
茶色はグリザイユにグレーズしてあるわけではない事もお分かりいただけると思います。
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「でもエスキースにしては丁寧ではないか」と思われるでしょうが、これはここ⬇
http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2012/important-old-master-paintings-n08825/lot.26.html
にも書いてある様に版画の原画として描かれたものなので、丁寧だけれども小さいサイズなわけで、下層描きとしてのグリザイユではなく、これで完結している作品です。
erwruyujjb.png


本書に出てくるヴァン・ダイクのグリザイユ画はこちら⬇
retygreghhhre.png
ですが、やはり57×41㎝の小さな絵で、絵を描いた上から縦横にマス目が引いてある事からも、本画(133x109cm)⬇のエスキースあることは明らかです。
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(http://www.alamy.com/stock-photo-anthony-van-dyck-rinaldo-and-armida-132619264.html)

本書掲載のレンブラントのこの絵も54×44㎝というサイズで、版画の原画として制作されたものとしています。
sdfvgdsettuj.png

bn vhgfyhrtgf

レンブラントはさまざまな油彩技術を駆使した人なので、部分的にインパスト(絵具の盛り上げ)重視でまず単色で絵具を盛ってからグレーズしている絵はよくありますが、小品の中に全体を単色下層描きにグレーズで彩色した様な絵がいくつかあります。
プリマで描けるし、単色下層描きにグレーズすると肌色はたいていこのように⬇
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あまり美しく無い色になってしまうのが普通ですが、何故あえてこの方法で描いたか私の想像では、版画の下絵として油絵を制作した後、タブローとして売るためにグレーズで彩色したのではないかと思ったりするわけですが、私はレンブラントはそんなに好きで見てるわけではないので分かりません。

いずれにしても、画面全体を単色で描いてグレーズで仕上げるという描法は、あったとしてもレンブラントの中ではごく僅かであることは確かだし、「古典絵画はどれも単色画にグレーズで描かれている」というのが全くの間違いであることはゆるぎません。

というわけで、本書き私にとってはある意味で空振りの本でしたし、特に面白い絵も載ってないので(個人の感想です)ぜんぜんお薦めはしません。

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ブックレビュー


「Vermeer in Detail」と「Caravaggio in Detail」
2017/07/27 23:32 |


フェルメール作品の部分拡大図を中心とした画集。
デジタルヴァージョンもあり、本の末尾にあるキーコードを入れると無料で見る事が出来るようになっていて、技法を読み取りたい者にとっては理想形の画集。

「それならグーグルアートの方がタダじゃん」ということになるので比較すると、グーグルに出ているフェルメールの絵は現在のところ22点。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/entity/m0bw2x?hl=en
この本に出ているのは37点(真贋があやしいものも含めて)。

しかしグーグルはどれも全体が拡大出来ますが、Vermeer in Detailの方は全体図は拡大すると少しボケ気味。
Vermeer in Detailの部分図はグーグルよりも大きく拡大されるものもあれば小さいものもあり、グーグルよりも鮮明なものもあるけど、ちょっとボケ気味なのも多いということで、どっちも一長一短です。


以下の比較画像はそれぞれ最大まで拡大したものです。

グーグルの画像の一部
goo1.png

Vermeer in Detailの「全体図」の一部
vid1-1.png

Vermeer in Detailの「部分図」の一部
vid1.png

グーグル
goo2.png

Vermeer in Detail
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グーグル
goo3.png

Vermeer in Detail
vid3.png

グーグル
goo4.png

Vermeer in Detail
vid4.png

Vermeer in Detailのデジタル画像一覧はこんなかんじです(一部です)
vidw.png

カラヴァッジョの方も、グーグルは画像は少ないけど「caravaggio in detail」の方はちょっとボケ気味の画像が多いです。
とはいえグーグルのカラヴァッジョの画像はわずかなので、カラヴァッジョが好きなら買った方がいいと思います。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/search?q=%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%A7

caravaggio in detailのデジタル画像はフェルメールの方は全体図も載っていますが、カラヴァッジョはすべて部分拡大図です。

⬇デジタル画像一覧の一部です。
iygyrdsrk.png

グーグル
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caravaggio in detail
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グーグル
gootsgnfhxn.png

caravaggio in detail
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グーグル
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caravaggio in detail
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caravaggio in detail
ireyoepgj.png

caravaggio in detail
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ちなみに私は買っていませんが、ファン・エイク、ボッシュ、ブリューゲルもあります。
(ファン・エイクは絶版のもよう)
 















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ブックレビュー


巨大アートビジネスの裏側
2017/03/10 08:23 |



オークションを中心に美術品売買の裏側やエピソード、現在の世界のアート市場の流行や傾向などを紹介し、バブル崩壊以後すっかり勢いを無くして停滞している日本の美術界を尻目に、世界のアートビジネスが成長・拡大している様子を、とても分かりやすく読みやすい文章で解説した新書。
2016年5月刊で昨年夏に読んだんですがブックレビューに書くのが遅くなりました。
著者はサザビーズジャパンの元社長さんで、2009年にも「サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術」を出版されていますが、アート市場はその後も大きく変動しているので、最近のトレンドを知るにはこちらも読むべき。 
といっても美術界は景気に大きく左右されるので、本書の情報の一部も今ではすでに古くなっているものもあるかもです(たとえば中国人の動向とか)が、簡潔な文章で沢山の興味深い話が詰め込まれていておすすめ。
たとえば「絵画オークションの世界で売れる色と売れない色」といった話も入っていて、万国共通なのは青なのだとか。
赤の方が人気がありそうに思ってましたが、それは東洋人の感覚なんすかねえ?
私の経験ではモデルの服がピンク色だと人気が高いです。
「茶色は売りにくい」というのはよく分かります。

ちなみに「作家に対する利益の分配の法制化」についても書かれていて、私も最近国内オークションで過去の作品が当時より大幅に高く取引される事も増え、私本人に分配金が入らないのは不公平ではないかと何人もの方からご親切で心配いただく事が多くなりましたが、私としては将来値上がりする保証も無いのに、数十万、数百万出して拙作を買っていただいた方々にずっと恐縮に思ってきたので、買っていただいた方にトクになれば、けっこうお金に執着の強い私ですが「売れたお金から配当をいくらかほしい」みたいな気持ちはありません。
それに高く売れたら分配を要求するのに、売却した際に購入いただいた時より大きく値下がりしても、作家はなにも補償しないというのは虫がよすぎる話だと思います。
もっとも、数億で売れた場合に数百万のと分配という制度らしいので、どっちにしてもほんの一握りの作家の問題ですが。


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ブックレビュー


Portraits d’ateliers. Un album de photographies fin de siècle
2017/02/05 10:05 |
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ルイ・モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル

https://www.amazon.fr/Portraits-dAteliers-Album-Photographies-Siecle/dp/2843102650/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1486169451&sr=8-1&keywords=Portraits+d%E2%80%99ateliers.+Un+album+de+photographies+fin+de+si%C3%A8cle

19世紀末フランスの画家と彫刻家のアトリエを撮った写真集。
印象派の画家は無くてアカデミー系の作家ばかりというところがすばらしい。

昔の画家がどのように制作していたかの一端を見たいと思って買ったのですが、写真撮影用にかなり部屋を整えたり、作品が見える様に配置したり、よそ行きの服で描いてるポーズをとったりしているっぽい写真が多い。

ナゾなのは絵を額縁にはめてイーゼルにかけて制作のポーズをとっている写真が多いのですが、それは当時普通の事なのか、それとも額にはめとかないとさまにならないということでやってるだけなのかよく分かりません。

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イグナス・スピリドン

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エミール・ムニエル

額にはまっている絵の場合、どれも完成している様に見えるので、単に写真用のポーズなのか、それとも額にはめたかんじを見てちょっと修正するという事がよくあるのか…?

昔のサロン展やロイアル・アカデミー展の前日は「ヴァーニッシングデイ」といって、すでに壁にかけた絵に加筆したりニスをかけたりしたらしいので、別に珍しい事でもないのかも。
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他にもよく分からないのは、イーゼルの絵を前に傾けて描いている画家がけっこういるんですが、前傾させると描きにくそうなのになぜそうするのか….
部屋の採光の状態によっては、光って見えにくいのでこうするんですかねえ。
窓等の光源が映ってない写真が多いので、そこは残念です。

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エマニュエル・ド・ディユドネ

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パスカル・ダニャン=ブーヴレ

この画家は温室で描いていますが、なるほどこうすれば寒さや風に悩まされずに屋外の光で制作出来ますな。
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ダニエル・リッジウェイ・ナイト

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W・A・ブグロー

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ジュール・ジョセフ・ルフェーブル

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アルフレッド・ブーシェ

図版95枚。
期待したほどには制作のヒントが見つからなかったので、特にお薦めはしません。
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ブックレビュー


Silent Partners: Artist and Mannequin from Function to Fetish
2017/01/22 10:06 |



ケンブリッジのフィッツウィリアム美術館で行われた、モデル人形に関する展覧会のカタログ。

絵描きが常に自分の都合に合わせてモデルさんに来てもらうのはなかなか難しい事で、昔の画家もいつもモデルを前に製作していたわけではないことは以前にも書きました。
写真の無かった時代の対策の1つとして、モデル人形が使用されていた事は広く知られていると思いますが、本書の様に昔のモデル人形がどのような物で、どのように使用されていたかを豊富な図版で詳しく解説した本は今まで無かったのではないかと思います。

私が買って絵にも描いた事のある19世紀のモデル人形とほぼ同じ様な物も載っていて、私にとってはけっこう面白い本だったのですが、購入をおすすめするかというと、使いやすいこのようなマネキンが色々あるので、まあ特に必要は無いですよねっというかんじです。 



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