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巨大アートビジネスの裏側
2017/03/10 08:23 |



オークションを中心に美術品売買の裏側やエピソード、現在の世界のアート市場の流行や傾向などを紹介し、バブル崩壊以後すっかり勢いを無くして停滞している日本の美術界を尻目に、世界のアートビジネスが成長・拡大している様子を、とても分かりやすく読みやすい文章で解説した新書。
2016年5月刊で昨年夏に読んだんですがブックレビューに書くのが遅くなりました。
著者はサザビーズジャパンの元社長さんで、2009年にも「サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術」を出版されていますが、アート市場はその後も大きく変動しているので、最近のトレンドを知るにはこちらも読むべき。 
といっても美術界は景気に大きく左右されるので、本書の情報の一部も今ではすでに古くなっているものもあるかもです(たとえば中国人の動向とか)が、簡潔な文章で沢山の興味深い話が詰め込まれていておすすめ。
たとえば「絵画オークションの世界で売れる色と売れない色」といった話も入っていて、万国共通なのは青なのだとか。
赤の方が人気がありそうに思ってましたが、それは東洋人の感覚なんすかねえ?
私の経験ではモデルの服がピンク色だと人気が高いです。
「茶色は売りにくい」というのはよく分かります。

ちなみに「作家に対する利益の分配の法制化」についても書かれていて、私も最近国内オークションで過去の作品が当時より大幅に高く取引される事も増え、私本人に分配金が入らないのは不公平ではないかと何人もの方からご親切で心配いただく事が多くなりましたが、私としては将来値上がりする保証も無いのに、数十万、数百万出して拙作を買っていただいた方々にずっと恐縮に思ってきたので、買っていただいた方にトクになれば、けっこうお金に執着の強い私ですが「売れたお金から配当をいくらかほしい」みたいな気持ちはありません。
それに高く売れたら分配を要求するのに、売却した際に購入いただいた時より大きく値下がりしても、作家はなにも補償しないというのは虫がよすぎる話だと思います。
もっとも、数億で売れた場合に数百万のと分配という制度らしいので、どっちにしてもほんの一握りの作家の問題ですが。


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ブックレビュー


Portraits d’ateliers. Un album de photographies fin de siècle
2017/02/05 10:05 |
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ルイ・モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル

https://www.amazon.fr/Portraits-dAteliers-Album-Photographies-Siecle/dp/2843102650/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1486169451&sr=8-1&keywords=Portraits+d%E2%80%99ateliers.+Un+album+de+photographies+fin+de+si%C3%A8cle

19世紀末フランスの画家と彫刻家のアトリエを撮った写真集。
印象派の画家は無くてアカデミー系の作家ばかりというところがすばらしい。

昔の画家がどのように制作していたかの一端を見たいと思って買ったのですが、写真撮影用にかなり部屋を整えたり、作品が見える様に配置したり、よそ行きの服で描いてるポーズをとったりしているっぽい写真が多い。

ナゾなのは絵を額縁にはめてイーゼルにかけて制作のポーズをとっている写真が多いのですが、それは当時普通の事なのか、それとも額にはめとかないとさまにならないということでやってるだけなのかよく分かりません。

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イグナス・スピリドン

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エミール・ムニエル

額にはまっている絵の場合、どれも完成している様に見えるので、単に写真用のポーズなのか、それとも額にはめたかんじを見てちょっと修正するという事がよくあるのか…?

昔のサロン展やロイアル・アカデミー展の前日は「ヴァーニッシングデイ」といって、すでに壁にかけた絵に加筆したりニスをかけたりしたらしいので、別に珍しい事でもないのかも。
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他にもよく分からないのは、イーゼルの絵を前に傾けて描いている画家がけっこういるんですが、前傾させると描きにくそうなのになぜそうするのか….
部屋の採光の状態によっては、光って見えにくいのでこうするんですかねえ。
窓等の光源が映ってない写真が多いので、そこは残念です。

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エマニュエル・ド・ディユドネ

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パスカル・ダニャン=ブーヴレ

この画家は温室で描いていますが、なるほどこうすれば寒さや風に悩まされずに屋外の光で制作出来ますな。
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ダニエル・リッジウェイ・ナイト

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W・A・ブグロー

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ジュール・ジョセフ・ルフェーブル

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アルフレッド・ブーシェ

図版95枚。
期待したほどには制作のヒントが見つからなかったので、特にお薦めはしません。
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ブックレビュー


Silent Partners: Artist and Mannequin from Function to Fetish
2017/01/22 10:06 |



ケンブリッジのフィッツウィリアム美術館で行われた、モデル人形に関する展覧会のカタログ。

絵描きが常に自分の都合に合わせてモデルさんに来てもらうのはなかなか難しい事で、昔の画家もいつもモデルを前に製作していたわけではないことは以前にも書きました。
写真の無かった時代の対策の1つとして、モデル人形が使用されていた事は広く知られていると思いますが、本書の様に昔のモデル人形がどのような物で、どのように使用されていたかを豊富な図版で詳しく解説した本は今まで無かったのではないかと思います。

私が買って絵にも描いた事のある19世紀のモデル人形とほぼ同じ様な物も載っていて、私にとってはけっこう面白い本だったのですが、購入をおすすめするかというと、使いやすいこのようなマネキンが色々あるので、まあ特に必要は無いですよねっというかんじです。 



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ブックレビュー


ウィンターハルター
2016/08/09 10:23 |
フランツ・クサヴァー・ヴィンターハルター(Franz Xaver Winterhalter)は19世紀のドイツ人画家で、当時大変人気があってヨーロッパ中の王侯貴族の肖像画を描いた人なので、歴史関連の本や番組で作品は頻繁にみかけますが、「きれいなだけの絵」として評価が低かったため画集もあまりなく、私もこれ
一冊しか持っていませんでしたが、アメリカ・ヒューストン美術館で8月14日まで開催中の「High society: The portraits of Franz Xaver Winterhalter」展のカタログが出ていました。




本書は色は悪くない方だし、図版も小さいわけではないのですが、等身大の肖像画なのに部分拡大図版がほとんど無いので、タッチや色使いの勉強にはあんまり役に立ちません。
ウィンターハルターの絵は一見くそ丁寧に描いてある様に見えて、よく見ると下層描き無し(に見える)でかなりざっくりとしたタッチで描かれていて興味深いので、画集としてはちょっと残念な出来のため、五段階評価で☆☆☆くらい。(個人の感想です)

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⬇この絵は掲載されていますが、以下の拡大図版は載っていません。
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ちなみに古い方の画集は、こちらも拡大図版は無く印刷はややおちますが、少し大判で図版も少し多いです。
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ブックレビュー


未完成画
2016/05/26 08:22 |
当ブログで繰り返し書いている粘着ネタは「古典絵画はグリザイユ/カマイユ技法だけで描かれているのではございません」というものですが、それを証明する展覧会がニューヨーク・メトロポリタン美術館で「Unfinished: Thoughts Left Visible 」と題し5月18日〜9月4日に行われています。
http://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2016/unfinished

ルネサンス以降の西洋の絵画と彫刻の未完成作品を集めた大規模な展覧会で、作家によって様々な制作過程があることを示していますが、私はよく知らない早い時代(「それ以降はよく知ってる」ということではないけど)のファン・エイクやチマ・ダ・コネリアーノの絵はグリザイユなのかどうかよく分からないものの、17世紀以降で人体をグリザイユないしカマイユにグレーズで描いている例は本展には一作もありません。

⬇チマ・ダ・コネリアーノ
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⬇ファン・アイクのこのような下描きに透明色をグレーズして
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⬇こう仕上げるのは不可能なので、これをグリザイユと解釈するのは違うだろうと思います。
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⬇ダ・ヴィンチのこれはサイズや構図からいって明らかにスケッチで、これには元々彩色をするつもりは無かったはずです。
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以前のブログにも書いたように、ダ・ヴィンチはカマイユで描いていた形跡が無きにしもあらずですが、一般的にはめったに見ない例なので、これをもって「古典画家はグリザイユ/カマイユで描いていた」ということにはなりません。

ジャック=ルイ・ダヴィッドのこれ⬇はカマイユではないのか?という疑問があるかもしれませんが、
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この⬇ダヴィッドの未完成画(本展には出ていません)のように、
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褐色で下層描きをしたあと、不透明な絵具をうすく少しずつこすりつけるように塗って⬇
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最終的にこのように⬇なめらかに仕上げるという人なので、「カマイユにグレーズ」というのとはまったく違います。
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こんな⬇カマイユを描いてその上に透明色をグレーズしても、なんだか分からないものにしかならないし、上⬆の手の回りのブルーは透明色ではなく不透明に塗られているということからもご理解いただけるものと思います。
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これも以前に書いた様に、被覆力の弱い赤や青等の絵具で布などを描く時はグリザイユやカマイユが使われることはあっても、人体をグリザイユ/カマイユで描くことはまず無いし、あったとしても極めて珍しいケースであるにもかかわらず、古典絵画のほとんどはグリザイユ/カマイユで描かれていると信じられているのは、20世紀に書かれた本でそのように述べていることを無批判に信じて広まったものと思いますが、一次資料である絵そのものが「グリザイユで人体は描かない」と語っているので、本や美校の先生の言うことを鵜呑みにするのではなく、もっとちゃんと作品そのものに向き合ってほしいものだと思います。

この展覧会のカタログである本書は、印刷は悪くないのですが図版が小さめのものが多いので、どう未完成なのか分かりづらいかもしれないことや、本ブログをご覧の方はあんまり興味なさそうな現代美術の図版が4割近く占めるのに値段は安くはないので、お薦めと言うには微妙。
現代絵画は完成してるんだか未完成なんだか、私にはさっぱり分からないです。

私が買った本は数ページが欠けていて、かわりに他のページが重複して入るという今どき珍しい乱丁になっていて交換してもらいましたので、お買いになったらすぐに点検されることをおすすめします。


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