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歴史的中発見かも
2010/11/30 14:30 |
「旧御物 蒙古襲来絵詞」といってもピンとこない方も、この絵はよくご存知か
と思います。

genpon.jpg
旧御物本(原本)


鎌倉時代に元が来寇した際に蒙古兵と戦った武士を描いた絵巻物の一部で、教科
書等では元寇を語るとき必ずと言っていいほど使われる場面です。
「てつはう」という火薬をつめた玉が炸裂している所が描かれていることでも有
名ですが、実はここに描かれた3人の蒙古兵と「てつはう」は江戸時代の加筆だという
説があります。

私がこの説を知ったのは一昨年に歴史物の番組を見ていた時で、それ以前にも一
部新聞にも載っていたようですが、その時はさほど大きく扱われてもいなかった
ので、少し興味はあったものの詳しくは知りませんでした。

私は高校生になってから西洋古典絵画に猛萌えしたのですが、それより前の小学
校4、5年ころからは日本美術が好きだったので、今でもヤフーオークションで
古画を時々見ては楽しんだり、安い物をたまに買ったりしています。

そして昨年ヤフオクに蒙古襲来絵詞の模本が出品されていたので何気なく見てみ
ると、くだんの場面に蒙古兵とてつはうが描かれていませんでした!
くわっ!!と思ってすぐに他の模本の有無を検索してみると、江戸時代後
期、松平定信が作らせた模本(楽翁本)やそのまた模本等は何種類
か出て来きますが、どれも3人の蒙古兵とてつはうが描かれたものばかりで、ヤ
フオクに出ている様な模本は全く見つかりませんでした。
rakuo.png
楽翁本(模本)
qdai.png
九大本(模本)

ヤフオクの説明文を読む限り出品者はその事には気がついてない様でしたが、ど
うしたものか手をこまねいて見ていたら、出品者の希望価格に届かずに終了して
しまいました。
気になったまま数ヶ月経過した後、このままだとせっかくの重要資料がまた人知
れず埋もれてしまうのももったいないと、出品者に連絡をとったところまだ売れ
ずに残っていました。
資料としては重要でも美術品としての価値は模写ということで低いので少々躊躇
したものの、思い切って購入し、「絵巻捏造説」を発表された先生にお知らせし
た所、この様な絵巻は見た事が無いとの事で、やはり未発見の史料であることは
間違いない様です。

先生の著書では御物本の「てつはう」の場面の蒙古兵の描線等が他の場面と
大きく違う事や、馬の後ろ足に生えている松が不自然である事を指摘して捏造で
あることを喝破されているのですが、確かに私の買った模本(以後「古吉本」と
便宜上呼びます)の馬の後ろ足を見ると、松は無く丁度そこが欠損している様に
描かれています。

fr.png
古吉本

この絵巻は元々傷みがはげしかったため江戸後期に修理され、その際に錯簡(紙
継ぎの順序の間違い)や加筆が行われてしまった様ですが、先生はくだんの
場面を調巻にかかわった福田大華という絵師が描いたものではないかと推察され
ています。

ネットで検索するとこの絵師は「故実や武器・武具にも詳しく云々」とあり、い
かにも「てつはう」を描き加えそうな人物なので間違いないものと思えます。
古吉本は他にも先生が推理された通りの紙継ぎの順になっています。古吉本
が最初の模写なのか模写の模写なのかは不明なものの、少なくとも楽翁本以前の
状態を模写した模本である事は間違いないと思います。

すでに教科書等では捏造(便宜上捏造と呼びますが、当時としては必ずしも悪い
事とは思わずに加筆していたと思われます)の場面らしいということで他の場面
に差し替えている本もある様ですが、先生の説に反論している方もおられま
すので、出来ればどなたかに古吉本を詳しく研究いただいて事の真偽を明らかに
していただきたいものと思います。


ところで、歴史上の有名な事柄はたいてい調べ尽くされているものと思っていま
したが、意外とこれまでの研究はけっこういい加減なものも多く、一次資料を読
み込んでない様な学者が権威だったすることもあり、最近になってようやく常識
をひっくり返す様な研究が次々となされています。

以前紹介した「源頼朝像=足利直義像」も明らかに今までの研究がお粗末で、新説
は信じるに足るものなのに、学者さんというのは今まで書いたものがひっくり返
されるのは非常に都合が悪いようで、この説でさえ理屈にもならない理屈で否定
しようとする学者さんがいることには驚きます。

藤本正行氏の「鎧をまとう人びと」という本は歴史と美術に通じた筆者が絵画史
料を読み解く優れた本で、たとえば以前足利尊氏像と言われていたこの絵

スクリーンショット(2010-11-27 18.23.14)


の鐙に
かけた足が後ろに向いてるのを見て、像主は怪我か病気で足がこのようになって
いるのだと思っている学者がいることが書かれています。
古画ではこのように足の向きがデッサン上はヘンになっていたりするのは、古い絵が
好きなら誰でも知っている常識で、筆者は一次史料であるはずの絵画への知識や
関心が無さ過ぎる事を嘆じておられます。この本は洋画には関係ありませんが歴
史好き・日本美術好きの方にはおすすめです。



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未分類


美術の窓
2010/11/23 13:20 |
今月20日発売の美術の窓12月号の特集「画材大特集」に画溶液についてのインタビュー記事2ページ掲載いただきました。
「何をどう使うのがベストなのかオレよくわかんないっす」というのが言いたい事だったんですが、掲載されてあらためて読むとなんか知ったげな(広島弁)話ですみませんってかんじです。
実際油彩画の材料やその使用法とかは何がベストなのか知れば知るほど分からなくなってしまいますし、昔の画家の様に描きたいと思っても、「古典絵画に近い」とうたっている画材も実際には微妙に又はかなり違うものがほとんどなので、こだわる事に空しさを感じる事が多いのが実情です。
また、画材や技法に関する知識が不必要なほど詳しくて、その点については自信満々なのに肝心の絵の方はぜんぜんアレな方はけっこう多いのですが、私が思うにはそういった人たちは「自分の絵がうまく進まないのは画材や技法の知識が足りないせいだ」という考えから、古典画家の「魔法」を手に入れようと間違った方向にのめり込んで行っているのではないかとも見えます。上手くもない私が言うのもなんですけど、他にやるべき事があるんじゃないっすか?って思うわけですよ。(そっちの方が好きで主なんだってことなら別にいいんですけど)
だからといって技法や材料に無関心でもいけないので、分かったつもりにならないで勉強していきたいというつもりで掲載いただきました。

話は違いますが本日20時からBS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」という番組で、「ホキ美術館~千葉県に誕生!日本初、「写実絵画の殿堂」!!」と題して、あの美術館について放送されるのですが、塩谷画伯も出るので本人は恥ずかしがってましたが勝手に宣伝(おせっかいババア)。
塩谷家での制作ロケもあったというので楽しみにしていたら、そっちより館内での説明の方が分かりやすかったとボツになったそうで残念至極。
でも珍しく森本草介先生(私は面識がありません)も出演とのこと。
あ、念のため言っときますが私の絵はここの美術館には収蔵されてませんから。


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事務的な話題


筆洗液と面相筆
2010/11/10 23:38 |
2007年9月のブログで某水性筆洗液をおすすめして私もずっと使っていましたが、最近複数の方から「水性筆洗液は筆を痛める」と聞きまして、ホワイトスピリッツ(ペトロール)で洗うのが良く、俵屋工房さんのHPに書かれている「大切な筆の洗い方」http://www.tawarayakobo.com/10.gazai/material/guide/mori/fude-arai.htmlを実践したところ、筆の傷みがぴたりと止んだとのこと。私もコリンスキーの痛み方が気になっていたのであわててペトロールを買いました。
ブログで不用意におすすめしてしまい、水性に切り替えてしまった方には申し訳ありませんでした。(洗浄力はほんとに良いいし、「筆にやさしい」とうたっている製品もあるんですけどね...)
今月20日発売の「美術の窓」の画材特集で画用液についてインタビューをお受けしたのですが、そこでも「画材は何がベストなのか分からないので、絵描き同士で情報交換しながら少しずつ勉強しています。」としめくくりました様に、どれを使うのがベターかは常に意識してアンテナを張っておかなければと思います。

ところで面相筆は1000円以下では良い物がなかなか無くてあんまり使ってなかったのですが、日本橋三越本店の向かいの「むろまち小路」を入ってすぐの所にある、横山大観も贔屓にしていたという老舗書画材料専門店「有便堂」さんhttp://www.yubendo.co.jp/で売られている「鼬面相筆白圭」(682円)は、毛のまとまりがすごく良い上に腰があって気持ちよく線が引けるのに面相筆としては安いというおすすめの逸品。
それより大きい「鼬面相2号」(1102円)はやはり書画用として作られているので油絵用としては少し腰が無くて私には使いにくいのですが、繊細な仕事をされている方には使えるかもしれません。

P1030169.jpg
右が「鼬面相筆白圭」
左が「鼬面相2号」
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制作過程


ブグローのカタログレゾネ
2010/11/09 17:00 |
ARCに予約してから4年待ってようやく届きました。
カタログ編と生涯編の2冊セットですごい重量ですが、印刷があまり良く無い図版が多かったり、全ページの大きな図版が少なかったり、部分拡大図版がほとんど無かったりと、期待が大きかっただけにけっこう残念な点が多いのは否めません。
この本からどれか選んで模写出来ればと思っていたのですがちょっと無理め。
とはいえ行方不明作品も含めてこれだけの図版を集めてくれた事は有り難いことで、ブグローの全貌を知る上ではもちろん欠かせない本ということでは私にとっては価値ある本でした。



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ブックレビュー


Giovanni Boldini in Impressionist Paris
2010/11/03 13:43 |
ジョヴァンニ・ボルディーニはとっくに「好きな画家」かブックレビューに出していると思っていたら、まだだったので自分で意外でした。
テクニシャンの多い19世紀の中でもこの画家の技倆は屈指のものですが、日本ではほとんど知られていないのは残念です。
ボルディーニはイタリアの画家ですが、本書はフランス滞在中の作品を集めた画集。
きれいな図版も多いのですが、少し古いと思われる色の悪い図版もあり、デッサンやスケッチも多くて値段と比べると、おすすめはしにくい内容。




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Boldini4.jpg
(この絵は5号弱の大きさ)

Boldini.jpg

スクリーンショット(2010-11-03 13.49.30)

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ブックレビュー


John Singer Sargent The Complete Paintings Volume 5
2010/11/03 13:07 |
John Singer Sargent: Figures and Landscapes, 1883-1899:
The Complete Paintings Volume 5 [ハードカバー]


サージェントのカタログレゾネ第5巻出ました。
「Carnation, Lily, Lily, Rose」は好きな絵ですが、今回は
スケッチや模写、印象派的な作品がほとんどで、私にとっては
少々物足りない内容。
特におすすめもしません。

ss8.jpg
Carnation, Lily, Lily, Rose

スクリーンショット(2010-11-03 12.59.47)

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ブックレビュー




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