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ブグロー模写やってみた 前説 その3
2013/03/28 10:53 |

描き始めをどうするかは色々な方法があると思いますが、私は今回はバーントアンバーの「ソース」(日本で言う「おつゆ」)で輪郭と陰影を描いて、それをいったん乾かしてから固有色のエボーシュをすることにしました。

「アカデミーと近代絵画」に出ている例は「….赤茶色の「ソース」で輪郭線を描き、次に影の部分に同色の少し薄めた色調を置き、最後に固有色を置いていった」(p81)とか「スケッチをキャンバスに木炭で写しとって、レッド・オークルをテレピンで薄めた「ソース」でなぞり輪郭線を得る….」(p83)、「第一回目にデッサンをキャンバスに移す。第二回目に油彩で輪郭線をなぞり、テレピンとレッド・オークルの混合物を薄めたもので陰影部の主要なマッスを確定する。三日目には髪の毛や付属部分のみならず肉体の色を置いていく…」(p87)等が書かれていますが、これらはソースが乾いてからなのか、乾かないうちに進めていくのかは分かりません。


この様な「褐色で陰影部を描いて明部を固有色で描き進める」という手順は、昔から最もスタンダードな方法の1つのようで非常によく見かけ、ヴァン・ダイクのこの絵にもはっきり見てとれます。
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ブグローはどうしているのかよく分かりませんが、私の場合は描いた輪郭や影部が消えてしまうと、とんでもなく位置がずれてしまうし、ソースが乾かないうちに描くと色が濁りがち(上手い人はそんな事もないのですが)ですし、このお尻に透けてる黄褐色のトーンは、いったん乾かしてから上に固有色を塗っている様に見えるので、いったん乾かす事にします。

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ルネサンス後期以前は絵具が被覆力が低いため、下絵もきっちりしたものを用意する必要から、紙に描いた下絵を基底材に転写する事も多い様ですが、16-17世紀以降はは絵具の被覆力が高くなり、この時代の画家達はデッサン力があるので、わざわざいったん丁寧なデッサンを紙に描いて、それを転写して始めるのは手間と時間の無駄なので、キャンバス等にいきなりデッサンを描いたり、アタリを描いて絵具で形を整えながら描き進める方が多いと思います。

⬇この絵もハトは簡単なアタリをとってあるだけですな。
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私にはとうていムリなので、細かい部分までトレースします。

「前説」終了。

制作「一日目」につづく...
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制作過程


ブグロー模写やってみた 前説 その2
2013/03/28 10:44 |
次にこの絵がどのような下層描き(エボーシュ)をしているのかですが、
美術の窓の拙稿「古典的描法による油彩表現」( 2011年 01月号ー03月号)



では、下層描きは顔は固有色で、他は白+バーントアンバーで行いました。

私の白+バーントアンバーの粗描きは、「褐色と白で丁寧に描いたモデリングに透明色をグレーズして仕上げるいわゆるカマイユ」ではなく、トレース線を油絵の具に置き換えて輪郭と影の位置を描く事と、色の深みを出す事と、絵具層の厚みを出す事が目的の、上に不透明に上層描きする事を前提にしたざっくりした下塗りで、白+バーントアンバーのこのような下層描きのやり方は、古典作品ではそんなに作例は多く無いと思います。

「古典技法」ではなく、あくまでも「古典的な方法」であって、青木敏郎先生の方法の自分なりの変型です。(「洋画を学ぶ」P104〜「静物ー青木敏郎」参照)



ちなみにブグローと同時代のこの人は、確証は無いけど見たかんじバーントアンバーと白で下層描きしているっぽい。
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http://www.sandstead.com/

「印象派神話」のせいか、それ以前の昔の画家達はみんな同じ描き方を固守しているかのようなイメージを抱かれがちですが、昔の画家もどの様に描くかは自由で、色んな地の色に色んな手順で描いている事は、拙ブログの
http://paintingsfuruyoshi.blog56.fc2.com/blog-entry-307.html

http://paintingsfuruyoshi.blog56.fc2.com/blog-entry-66.html

http://paintingsfuruyoshi.blog56.fc2.com/blog-entry-242.html

をご覧いただけれはと思います。

追加にこんな例⬇
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Pelagio Palagi 19世紀

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ヴァン・ロー 18世紀

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George Dawe 19世紀


どんな方法をとるかは、絵をどう進めてどう仕上げたいかによって個々に画家が判断するもので、昔の絵がどれも同じ手順で描いてあるわけでもなければ、個々の画家もいつも同じ手順で描いているわけでもありません。

ブグローのスケッチも灰色地のみではありません。⬇
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さて「ガブリエル・コット」はとても丁寧に塗り込まれているため、どのようなエボーシュが行われているのかを見極めるのは難しいです。
古典絵画や19世紀絵画は、うすい褐色が下層に見え隠れしている事が多いですが、この絵も所々わずかに褐色が下層に見えるので…. 
         ⬇   
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この⬇ブグローの絵のように、下にまず褐色を塗っているものと推測。

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http://www.sandstead.com/images/virginia_museum_of_fine_arts/

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⬆目の上の影や髪のはえぎわ、首の影などに透けて見えます。
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⬆指の影やお尻の下の方。

今回模写するにあたり、19世紀の工程を探るために、アルバート・ボイム著「アカデミーと近代絵画」を購入。


この本は2005年の発刊時に書店でパラパラと見て、値段に見合うだけの情報は無さそうだったので買ってませんでしたが、19世紀のアカデミー画家たちの制作に関する当時の文献を集めていて、今回エボーシュについて色々参考になりました。

この本の論旨は、アカデミスムと近代絵画は対立するものだという一般的な認識に対し、実はアカデミストたちもエボーシュ・スケッチ・エスキースなどの持っている芸術性も認めていて、アカデミスムと近代絵画は同じ流れの中にあるもので、アカデミスト批判は不当なものだという事を論証しようとしたものらしく(「したものらしく」というのは、拾い読みしただけで完読してないので)、そのためエボーシュやスケッチ・エスキースの話が中心となっています。

この本の、「前衛=善、アカデミー=悪」という「常識」を痛烈に批判した序文は痛快ではありますが、著者がこの本のおかげでアカデミスム絵画の復権や、写実画の復活に大きく寄与したとしている事については少々疑問です。(美術評論というものには全く興味がないので、こういう本が美術全体にどれほどの影響があるものかは知りませんけど)

アカデミー絵画(この名称については長々と説明が必要ですが、面倒なだけなので、「19世紀後半の、生粋の印象派ではない、写実的な上手い絵」としておきます)の衰退は、印象派やそれに続く近代絵画の様な「正しい絵画」が現れたためではなく、社会の情勢や流行の変化や「飽き」が大きな原因だと思います。

美術は崇高で永遠のものと持ち上げられがちですが、やっぱり時代時代の流行というものにも左右されていて、サージェントでさえ晩年は学生達から「流行遅れの画家」と思われていたようです。

第二次大戦の後は、戦争への反省から、「教養人たるものは共産主義的思想を持つ事が当然だ」という考えの蔓延のもと、古い権威の否定から、アカデミー画壇=悪と決めつけるエセ知識人がはばをきかしてたわけで、私の若い頃も「宮廷画家=悪人」という事を、私に得意げに語ったスノッブがいました。 

しかし共産主義国がどこでも徹底したダメっぷりを見せつけてしまったし、「破壊」や「実験」ばかり見せられてもいいかげんウンザリだしで、その幻滅から次第に世の中の潮流は変わっていき、必然として絵画に限らず思想・哲学・文学・音楽等々いろんな分野で古典の復権が行われてきたので、この本が美術界の潮目を変えたというのはどうなんだろうと思います。

一方、この本は19世紀の絵画技法に関する膨大な一次資料の文献を渉猟・引用して書かれているので、「印象派以前の絵はどれもグリザイユ/カマイユにグレーズで描かれている」という間違いを信じ込んでしまっている方達には、その誤りを正す事に役立ちます。(著者の意図しなかった点ですが)

さて本題に戻りますが、私は寺田春弌著「油彩画の科学」を読んで、「エボーシュ」とは褐色の下層描きをさすものと思い違いをしていましたが、この本で固有色の下層描きもエボーシュと知りました。

「アカデミーと近代絵画」には19世紀のエボーシュの工程や使用色の例がいくつか書かれていますが、何度も申しています様に、画家の数ほど描き方があり、ここに書いてあるのはひとつの例であるという事に留意して読んでいただきたいと思います。

たとえば最初に輪郭や陰影を描く際、レッド・オークル(原文ママ)を使うと書かれていますが、確かにレッド・オーカーっぽい色を使っているものもよく見ますが、誰もがこの色で描くわけでは無く、バーントアンバーもよく使われていると思います。
 
⬇左レッド・オーカー(オークル・ルージュ) 右バーントアンバー 
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前説 その3につづく....



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制作過程


ブグロー模写やってみた 前説 その1
2013/03/28 08:24 |
ブグローの模写やってみました。
これから過程を長々書くつもりですが、「そのあげく結果これ?」になるので、先に結果を出しときます。

まず原作⬇ William Adolphe Bouguereau 「Portrait of Gabrielle Cot」
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⬇古吉作「ガブリエル・コットの肖像模写」
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に、似てね〜….

まあ、私なんぞにブグロー先生に近いものが描けるわけも無いですが、どのように描いたか何回かにわたって書いていきたいと思います。

もちろん「ブグローはこのように描いた」と言うつもりは毛頭ありません。
原作がどうやって描いてあるのかは分かりませんので、あくまでも「古吉はこうしてみた」という話です。

私は高校1年生の頃から油絵を始めましたが、25歳くらいからモデルを使って描き始めるまでは、模写をずっとやっていました。
模写は好きなのでけっこう沢山やりましたが、70年代後半から80年代前半の事ですので、良い印刷の本が無く、そもそも古典絵画の画集そのものがなかなか見つからない時代でした。
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⬆ヴァン・ダイクの模写とドヤ顔の22才の古吉先生


フランスかイギリスに行って模写勉強したかったのですが、言葉が出来ないし勇気も無いので夢で終わりましたが、長生きはするもので、最近はデジタルの発展のおかげで鮮明な画像で見れる様になり、高精細な画像だと、美術館で見るよりも細かい所が観察出来る様になりました。

もちろん本物の色が正確に再現されているわけではないし、絵具の盛り上がり具合がいまひとつ分かりにくかったりはするのですが、美術館での模写は鼻先をくっつけるくらいに近寄って見る事は出来ないので、これで模写勉強をし直したいと思っていました。

とはいえ日々制作や雑事に追われてなかなかきっかけが無かったところ、私の最初の個展の頃からおつきあいのあるお客様から、ギャラリーアートもりもとさん(http://www.artmorimoto.com/)の模写の企画展に参加してみないかご提案いただき、良い機会なので承る事にしました。(今年7月20日から27日までの予定)

ブグローの「ガブリエル・コットの肖像」は好きな絵なので模写してみたいと思っていましたが、大きい画像はあるものの、白飛びしていたりしたので今回あらためて探して直してみると、渡部満先生から教えていただいたこのサイトhttp://commons.wikimedia.org/w/index.php?title=Special%3ASearch&profile=advanced&search=Bouguereau&fulltext=Search&ns0=1&ns6=1&ns12=1&ns14=1&redirs=1から良い画像が見つかり、これ⬇に決定。

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gabrielle_Cot_1890.jpg


まずはこの画像をすみずみまで観察する事から始めました。
ブグローの中でも特に丁寧に塗られてる方の絵なので、読み取りにくい部分が多い作品です。

ネットで検索すると、ブグローをグリザイユやカマイユで模写している人が多いのですが、もちろんグリザイユ/カマイユではありません。
ルネサンスから19世紀アカデミスムまでを通して、グリザイユやカマイユで人体を描いている絵は、ごくまれにありますがほとんど無いし、この絵にもその様な様子は見当たりません。
後でふれる「アカデミーと近代絵画」という本にも、この時代の画家が「グリザイユ/カマイユでモデリングして、透明色でグレーズして描いた」などとはもちろん書いていません。 

⬇この絵ではグレーズは目の虹彩と白目にブルーが少しかけられていると思います。
瞼と眼窩の境目は乾いた後バーントアンバーっぽい色を塗っている様に見えます。

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⬇まつ毛は乾いてからバーントアンバーっぽい色で入れてあるもよう。
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このあたり⬇ももしかするとブルーを少しグレーズしているかも。

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⬇このような青味は上の青とは違い、肌色に黒を混ぜた不透明色だと思います。

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⬇歯はグレーズじゃないけど乾いた後から半透明に描いてます。
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サイズは日本の8号とほぼ同じサイズで、キャンバスは細目だろうと思います。完全にツルツルではなく、なめらか気味ながら少しだけ目を残した地塗りのようです。⬇(拡大)
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地塗りが白なのか着色地なのかはこの画像からは読み取れませんが、ブグローの他の作品には明るい灰色地に描いたものがあり、その方が上にのせる褐色の発色がいいので灰色に塗る事に。

黒+白だけの灰色では色が良く無いのですが、このブグロー作品もそういう色ではないので、バーントアンバーを少量入れた灰色にしました。
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⬇細目の8号キャンバスにシルバーホワイト+ピーチブラック+バーントアンバーを筆で塗ってファン筆でならし、1週間乾燥させる。
(いったん塗った後、目が少し残り過ぎていると思ったので、もう一回塗り重ねました)

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今回描画に使う白はすべてシルバーホワイト。
黒はピーチブラックです。
以後「白」「黒」とのみ表記。


「前説 その2」につづく....
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制作過程


サクラ
2013/03/22 20:50 |
ご訪問あざっす!

春ですねえ〜。
絵描きのくせに風流心は人一倍乏しいんですが、東京アートフェアと白日会展拝観のついでに千鳥ヶ淵に行って来ました。
土日に出掛けるつもりの方が多いせいか、まだ7〜8分咲きのせいか、思ったほどには人出が少なく(といってもかなりの人ごみ)、壮麗な桜を楽しんできました。
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家でも昨年ヤフオクで買った桜下美人図の掛軸を掛けて鑑賞。(床の間が無いのでなんとも無粋ですが)
sh1.png絹本著色

「秋畝」と落款があり、たぶん寺崎広業の弟子の山田秋畝の作。

明治20年生まれで、詳しい画歴も没年さえも分かりませんが、大幅で丁寧かつ綺麗に描いてあって、画面に少しシミがあって共箱(作者の落款と題名の書かれた箱)が無いものの、これで35000円はあまりに安いので買ってしまいました。(元骨董屋の業)

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アートフェアと白日会の感想は例によって書きませんが、最近特に仕事中ダレ気味な気持ちに喝をいただきました。

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買い物プギ


アンダース・ゾーン
2013/03/18 08:18 |
アンダース・ゾーン(Anders Zorn)は私の個人的な「上手い油絵画家ランキング」のトップ10に入る超テクニシャンなのですが、今日では認知度が低いために、その筆さばきのかっこよさがほとんど知られていないのは残念です。

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これまでに画集は1990年発行のものと、1922年の版画集しか持っていなかったのですが、今は無いだろうと思って先日ちょっとアマゾンで検索して見たら、購入可能な本が3冊も見つかり、早速注文。

一番良かったのはこれで、3冊の中で一番安いのに最も図版豊富。印刷も悪く無いので買うならこれですが、中くらいや小さい図版も多いのが残念。


ボストンのイザベラ・ステュワート・ガードナー美術館で行われた展覧会のカタログ。
図版は多くも無く少なくも無く、印刷も特に良くも悪くもないので、上の本を買うなら買う必要は無いと思います。


この本は文章中心で図版が少なく、白黒図版も多い上に印刷もいまいちなのに高いという、私にとって最悪な本。


アンダース・ゾーンはスウェーデンの人なのでアンデルシュ・ソルンと読むのが正しいようですが、ウィキペディアにはアンデシュ・ソーンとも書かれていてよくわからないので、ここでは英語読みの「アンダース・ゾーン」としました。
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ブックレビュー




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