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白亜地について
2009/08/27 18:30 |
以前私は麻又は綿布を板やパネルに膠と白(亜鉛華と石膏)で
貼って、さらにそれを塗って地塗りとし、最後に油吸収止め
にアクリルジェッソを塗って仕上げていました。

しかしデパートで展示中の絵にヒビが入った事があり、以降市販の
キャンバス(フナオカ)を張って使用する事にしたことは書きました。


デパートでのヒビは、50号のパネル(薄い合板に棧を付けたも
の)に貼ったものですが、照らすライトの熱によって、板の収縮
率と綿布の収縮率の違いによって出来たものと思います。


他の白亜地の先生方の作品を見ていると、しばしばビビが入
っていることがあり、私のやり方がマズかっただけではなさそ
うです。

さて地塗りにも色々あり、それぞれの画家が自分に合ったも
のを使っているわけで、それはそれで良いのですが、一部の
方達に、「古典絵画の流れを汲む者は白亜地に描くべきで、
市販キャンバスなどは使うべきではない」という「白亜地信仰
」のようなものがあり、それはちょっと気になるので、私見を述
べさせていただきます。

青木敏郎先生も昔の絵は油地かもしれんと最近よく言って
らっしゃいますが、そもそも白亜地が油地より優れていると
か、保存の優れた古典画が白亜地に描かれているというの
は何が根拠になっているのかということを考えると、ラングレ
ーあたりが「油彩画の技術」で言い切ってるからそうかなと
思ってしまってるだけかもしれません。

確かに堅牢な板(ということは小品に限られます)に貼った布
に白亜地を施せば良い地塗りとなりますが、薄い合板パネ
ルに貼ったり、張りキャンバスの地塗りにするとひび割れの
危険性が高くなります。
(私の見た他の作家の例では、厚みのある合板に布を貼っ
た白亜地でバキバキにヒビの入ったものもあります。この場
合は膠の比率が低すぎていた様です)

白亜地は吸収性が高いために、そのまま使うと油が吸われ
て色調や艶が崩れてしまう上に、固着性も落ちるため、油を
染み込ませないといけませんが、そんなことするくらいなら
油地で良いのでは?と思います。

吸収性があるおかげで、上にのせた絵具が浸透して根のよ
うにしっかりと接着するとラングレーが書いていたと思います
が、もし油に油では固着力が弱くなってしまうのなら、描画の
第2層、第3層がベロベロはがれ落ちた絵が沢山みかけられ
るはずですが、普通しっかりと固着しています。
(昔の日本人はテレピンだけで描いたりしてたから、日本人の
絵ではたまにそういうの見ますけど。)

ラングレーはまた、吸収性の地にすることで余分の油が地に
吸われ、黄ばみがおさえられるということも書いていますが、
油地に描いた時や上層描きしたとき、目に見えて油が浮き上
がって黄ばんだりしたのを私は見たことがありません。
(もともと油が過剰すぎる場合はありえますが)

白亜地は安価に細目や平滑な地を作れるので、それなりの
利点はありますが、10号1枚作るのにのべ丸一日かけてるよ
うな人を見ると、「フラットキャンバス買った方が多分安くつく
し、その時間は描画に使った方がいいのでは?」と言いたくな
ります。

地にはエマルジョン地とか半吸収性地とか色々ありますが、
そこまで書くと大変だし複雑なので、この稿ではおおざっぱに
白亜地と油地にしました。

また、ここでは「古典絵画は油地に描かれている」と言ってい
る訳でも、「油地が白亜地より優れている」とするものでもあり
ません。
どの地も短所・長所がありますので、地は仕事に応じて合理
的に選択を行うべきものというのが主旨です。

ラングレーの「油彩画の技術」は、古典絵画技法のバイブルの
ような趣があり、私も若い頃は鵜呑みにしていましたが、どうも
かなり誤謬のある本なので、まんま受け取らないように注意
しましょう。
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制作過程




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