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新期講座と写真使用について
2011/12/07 14:55 |
早いもので「もう師走かよ」という時期になりましたが、最近ブログの更新が少なくて申し訳ございません。

さて年明け1月14日から始まりますアートマスターズスクールでの拙講「古典的描法による人物講座Part2」は、おかげさまで定員の15名様にあとお1人で達します。
受講ご希望の方はアートマスターズスクールまでお問い合わせ下さい。
http://www.artmasters.ac.jp/koukai.htm#furuyoshi
こちらのご案内で記載もれになっていますが、今回も写真からの制作となります。

モデルさんはWMプロモーションhttp://www1.r4.rosenet.jp/worm-c/WM_Pro/Production.html所属の身長162㎝のハーフ美少女。
スクリーンショット(2011-12-07 14.38.42)
(教室での制作はこの写真ではありません)


「写真かよ」とおっしゃるむきもあるかとは思いますが、プロ志望の生徒さんが多いので、今後の実戦に役立つ方法として実写授業同様(人によってはそれ以上)に有効であると思っています。
が、「写真使用はタブー」という世間一般の感覚はなかなか根強いので、しつこいけどまた写真使用について長々と書いてみたいと思います。

まず、絵画教室で人物を描く場合、モデルさんと生徒さんの手元それぞれに光が当たる様に照明をつけると、モデルさんに色んな方向から光が当たって非常に描きづらくなります。
「それも描くのが勉強だ」と言う方もいらっしゃいますが、私はこういうメチャクチャな光源で描く事は、ちゃんとした勉強になりにくいので反対です。
また、15人もいればモデルさんから遠い生徒さんは細部も見えません。


「写真では実際の色や明暗のニュアンスが正確に分からない」という意見がありますし、間違いではありませんが、実物の色等を正確に絵で再現する事がそれほど重要かというと、個人個人の嗜好としてはどうであれ、普遍的な正論でもなければ、絶対的な必須事項でもぜんぜんありません。

むしろ正確な再現ばかり重視した作品は、「人の手によって描かれた写真みたいな絵」という事に面白味を感じる人にはいいかもしれませんが、私の様な古典絵画の好きな者にとっては、絵画的な魅力に乏しい絵としか思えません。

古典画家達はモチーフの色や形や陰影そのまま再現しているわけではなく、色を意図的に変えたり強めたりやわらげたり、明暗を強調したり逆に弱めたり美しく無い陰影を消したりして実際の現象を変えた、「絵画的表現」をしています。
古典絵画の時代には、モチーフを画面にそのまま再現しようとすることは、「トロンプルイユ」(リアルに描く事で人を驚かせる事を目的にした絵画)の様な、芸術としては格下の仕事として認識されていました。

たとえばこの絵
スクリーンショット(2011-12-07 14.43.34)

v.jpg

のように、形も色も明暗のバランスや細かい陰影も現実とは大きく変えていて、ターバンは実物はおそらくこのような色ではなく、ラピスラズリの色をそのまま使って鮮やかに強調していますし、顔の細かい陰影をいちいち拾って描いたりもせず、鼻の穴も実物を見ればこうは見えないはずなのにぼんやりとあいまいに暗く描いていますし、右目はこの角度から見れば、虹彩はもっと隠れるはずなのをわざとずらしています。

黄色い服も色・形・明暗のバランスどれをとっても正確な再現などまったくどうでもいいという態度で描いてますし、実物を見れば影がこんなに真っ黒に見えるはずも無く、真珠も下の写真の様には見えても、上のフェルメールが描いている様には肉眼では絶対見えません。

「古典絵画は実写で描いているのに、写真で描くのは堕落だ」と考えている方はけっこう多いのですが、そもそも古典画家達は、常にモチーフを目の前において描いていたわけではありません。

風景を描く際にイーゼルを戸外に持ち出し始めたのは19世紀半ばからだということは有名ですが、古典画家は今の漫画家の様に、実物を見なくてもある程度描けるし、現実と違っていても画面上で成立していればそれで良いという姿勢なので、彼らがすべての制作で実写にこだわったという事実は無いし、写真があれば活用していたはずです。
たとえばレンブラントのこの絵

r.png

スクリーンショット(2011-12-07 14.49.17)

rsfh.png
の花は、実物を目の前にして描いたとは思えないし、見たとしても「そっくりに描かなければ」という考えはさらさら無い事は明らかです。
服のシワや陰影もおかしいので、すべての部分を実物を前にして正確に写し取ったわけではないことは明らかです。

また、写真をタブー視する方達はたいてい「制作する場合は自然光で描くべきだ」ということも主張して、あたかも自分が色や光に対して繊細であるかの様におっしゃる事が多いのですが、確かに自然光で見るほうが良いとはいえ、自然光の色や光量は季節や天候で大きく変わるだけでなく、一日の間でも朝・昼・夕方ではぜんぜん違うし、朝だけでも刻々と変わり、さらには太陽に雲がかかるたびに変わるため、そんな光で描く事が絶対良いなどとは思えないので、自然光だけで描く人が色や光に繊細であるとは限らないのではないかと思います。
自然光に近い蛍光灯で制作したり、色や光を調整した写真で描く事が自然光での制作より劣るということは言い切れないと思います。

実写にこだわる人にケチをつけるつもりは無いのですが、写真使用を否定してもらいたくは無いし、原則への過度の「こだわり」は、往々にして自らを小さくし、無用に縛りつけるだけで制作のためにならない事は理解しておくべきだろうと思います。(写真より実写の方が自分に合っている人も多いし、そういう方はこの話の範疇ではありません。あくまで「アンチ写真使用」への反論です)

私そのものは未熟なため、以前にも書きました様に写真に引きずられてしまうし、絵画的な色彩やタッチの妙味を加える事も出来ないので、上記の様な事を言う資格も無いのですが、「実写は絶対善、写真使用は絶対悪」という考えには今後も異議を唱えたいと思います。





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